「おや、トーコちゃん
今日もかわいいね」


ほら、ほら、ほら!!!

商店街のおばあさんだって
声を掛けてくれてッ。

「へへへッ」

私は立ち止り
おばあさんの前で

くるり、一回転して見せるッ。


赤いタータンチェックの
プリーツスカートが
ふわり、広がって

かわいく決まったッ。

のにッ!!!


「今日はセイちゃんと
いっしょじゃないのかい?」


おばあさんの視線は

私の後ろ
遥か向こうに
向けられていたりしてッ。


「……」

居ても居なくても

私は今日も
セイの存在に
自分の立場を脅かされるッ。


「…私とセイちゃんは
セットじゃないのになッ」


「ワンワンワン!」

よだれだらけの
小汚い老犬が

尻尾をふりふり
そんな私の傍に
寄ってくるッ。


「ほら、トーコちゃん」

老犬の大好物のクッキーを
おばあさんが私に握らせた。


「ワンワンワン!」

「……」


…この犬にいつも
エサをあげているのは

私じゃなくて
セイちゃんなんだけどなッ。


「ワンワンワン!」

「……」

犬まで私とセイちゃんを
いっしょくたにしてて

…ちょっとムカつくッ。


「ワンワンワン!」