よだれを左右に飛ばしながら

私の足元に顔を擦りつけて
犬が私に甘えようとする。


「やだッ!」

お気に入りの
ハイソックスがッ!!!


「お〜、よしよしよしッ」

「!!」

「トーコちゃん
そのクッキー
僕にちょうだい」


「……」

いつの間にか
私に追いついてきたセイが

よだれだらけの老犬と

「よお〜し、ヨシヨシッ」

じゃれあっていて。


「……」

…汚いのッ。


私から受け取った
クッキーを老犬に与えて

老犬の口からこぼれ落ちる
クッキーのカケラと
飛び散るよだれッ。

あっという間に
セイの洋服が
ベタベタになった。

「……」

確かにセイは

育てられていた田舎の家でも
馬糞の横にヘーキで
寝転がってられるような
子どもだったけどッ。

「うぎゃああああ」

傍にいて
とばっちりを受ける私は
たまったもんじゃないッ。


「私ッ、もうクッキーなんて
持ってないからッ」

バカ犬が
私のお気に入りの
クリーム色のトレーナーを
咥えて
おねだりをするッ。


「あははは!

お前もトーコちゃんのコト
大好きなんだね」

「……」

汚物まみれになって

嬉しそうに笑ってる
おバカな弟ッ。


「あ、待ってよ!
トーコちゃん!」

どこまでも
私の後をついてきたッ。