他人のフリをしたいのに
哀しいかな、ペアルックッ。


「あら、まあ」

オトナ達が
私と
私の後をついてくるセイを
二度見していく。


信号待ちで追いついて
私の横に当たり前のように
立ったセイが

私と目があって

それはもう嬉しそうな
笑顔を向けてきた。


「……」

襟が片方だけ立ち上がってて

トレーナーも半端に
まくれ上がり

ブラウスが半ズボンから
飛び出していて。


「…もうッ。
だらしないんだからッ」


ちゃんとしなさいよ、って
私に横目で睨まれて

「あ、うんッ」

セイが汚い手で
ブラウスを半ズボンの中に
入れようとする。


「ブラウスまで
汚れちゃうじゃないッ」

私はセイの手を制して

セイの洋服を整えた。


「どうして
襟元のボタンが互い違いに
なってるのかなッ」

ママってば慌てん坊ッ。


セイのアゴを上げさせて

トレーナーの首回りを
伸ばしながら

私はセイの襟元のボタンを
掛け直す。


「セイちゃんはホント
おバカさんなんだからッ」

「うんッ」


「……」

私になじられて
セイは嬉しそうにして。


…本当におバカなのかも
しれないッ。


「動かないでよねッ。

このボタンッ
ちいさくて
留めるの難しいんだからッ」

「うんッ」

「動くなって
いってるでしょッ!!!」

「……」