濡れた髪。

沼地の蓮の花のように
キラキラと輝いて…。


…じゃないッ!!!!


「何でッ!?」

地下道に
ひとり取り残され

濁流の中

どんな酷い目に
遭っているのかと

私は生きた心地が
しなかったと言うのにッ!!


「どうしてッ」

アナタはそんなにも
美しく悠然と
なさっているのですかッ。


「…まさか

ゴマフアザラシが
流れてくるとは
思わなかったから

驚いたぞ」


なんてッ。


私の足にしっかりと
絡みついていたのは

アナタのお手
だったのですねッ。


「ラッコってさあ
眠るとき

水草とかに
カラダを巻きつけて
流されないよう工夫する
って言うけれど

ゴマフはなあ…」


アナタはこの非常時に
何の話を
しているのですかッ!