「…まあ、こうして
無事だったんだから、ね」
私は自分にも
言い聞かせるように
セイをなだめ
「アゴ、上げて」
セイのツメ襟のホックに
手をやった。
「やだッ
何でハズれないのッ」
ツメ襟のホックに
何かが絡んで邪魔をするッ。
「…確かに
これはッ、とッ」
片手で外すのは
至難の業だッ。
「髪の毛がホックに
絡んでるみたいなんだが」
「あ、ホントだッ」
ホックに複雑にからみついた
少女の髪の毛…。
「指を切るなよ」
セイの声が耳に触れる。
「…うんッ」
水流に
さらわれないように
私のカラダを
セイの両腕が
しっかりと支えていた。
「…クス」
「何がおかしいのかなッ!」