本気ッ♂042
私とセイの頭上を
旋回するヘリコプターの
起こす風が
水面を波立たせる。
ケータイのボタンを
押そうとして
初めて自分の指が
かじかんでいるコトに
気がついた。
「0、9、0、のッ…」
シワシワ真っ白な指で
慣れない
他人のケータイを
操作する。
「慌てなくて
いいですからね」
そう言いながら
カノンくんは
私が11ケタの番号を
打ち終えるや否や
「もしもしッ
先輩ッ!?」
「あッ」
私からケータイを
取り上げた!
「ええ、今、地上に出て…。
それが、その…、いえ
報道のヘリが
頭上を飛んでいて。
ええ。
そうです。
こっちからの反応を
待ってるらしくって…」
カノンくんは
この思いも寄らなかった
天の助けを
セイに報告している
みたいだけれど
どこか歯切れが悪い。
「カノンくんッ!
カノンくん、あれ見てッ!」
ヘリコプターから
スルスルとロープが
下ろされてきて
クルクル、クルクル
回旋しながら
目の前の水面に着水した。
『もう少し、右!、右だ!』