ヘリから聴こえる
拡声器ごしの苛立った声。
少しでもロープが
私達の近くに来るように
ヘリコプターが
ロープの位置の調整を
繰り返しながら
低空に留まっている。
雨風に煽られて
上手くいかない様子だった。
ヘリが近づいてくる度に
猛烈な風と一緒に
水しぶきが飛んできて
目を開けていられないッ。
「…ええ!
わかりました…ッ!」
カノンくんは
ケータイを閉じると
私の腕をガシッと掴んだ。
「その腰のロープ解いてッ
ヘリのロープに繋いでッ
引っ張り上げて
貰いますよッ!」
そう私に伝え終わると
ゴホゴホゴホッ!
また激しく
咳き込み始めた。
…電話の間
ずっと咳き込むのを
我慢していたんだろうか。
「カノンくん…」
「早くッロープを!!!」
バラバラバラ。
カノンくんの声を
かき消すように
ヘリコプターが
頭上から
イッキに下降してくる!
目の前で揺れている
もどかしいロープ。
「…カノンくんッ!
私の腰のロープ
しっかり掴んでてねッ」
「えッ!?」