自分の腰から
垂れ下がっていたロープを
なかば強引に
カノンくんに預けて
水の中に
飛び込もうとした私の腰に
「トーコさんッッ!!!」
カノンくんが
必死でしがみつくッ!
「違いますッ!
飛び込んで取りに行け、って
意味じゃなくッ!
この濡れてるコートで
垂れているロープを
引き寄せるんですッ!」
え。
「これッ!?」
私は自分が着ていた
濡れて
段ボールのように
固く縮んでいたコートを
開いてみせる。
「…そのコートで
あのロープを
横から叩き落とすイメージで
狙ってください…ッ」
コホッ、コッ、と
カノンくんが
またちいさく咳き込んだ。
あはははは。
「…横から
叩き落とす要領で、ね!」
コートを脱ぐ私に
「片腕の先を結んで
ダンゴを作ってください」
カノンくんが私に
指示を出す。
「もう片袖を持って
振り回せばいいのねッ」
意気揚々と
狙いを定める私に
「…横から
叩き落とすんです!」
なんてッ。
「…わかってるからッ」
ちょっと表現を
間違えただけなのに
訂正せずにはいられない
憎たらしいトコロなんて
本当にセイみたいだッ。