私はカノンくんの指示通り
風に揺られて
ロープがこっちへ寄ってくる
タイミングを待って


「よッ!」

ナナメ上から
思い切り振り下ろすッ。


くるん、とコートが
ロープに巻きついて

「そのまま
引き寄せてくださいッ」

「ほいッ!」

コートの起動に
吸い寄せられるように

勢いよく
ロープがこっちに
飛んできた!


「キャーッチ!」

「トーコさんッ、危ないッ」

「おわッ!?」


…身を乗り出し過ぎた私も
確かに悪かったけれどッ。


「…カノンくんッ」

私の腰についたロープを

散歩中の
犬の飼い主みたいに

引っ張るのは
止めて貰えますかッ。


パラパラパラ。

ヘリコプターの音までもが
笑い声に聞こえますッ。


『おーい、大丈夫ですかあ』

ヘリからの問い掛けに

カノンくんが何やら
手足を動かし始めた。


「…何、やってるの?」

「手旗信号」

「はいッ?」