カノンくんは再び
ケータイを手に取ると

送信記録から
セイのケータイ番号を選び

「今からヘリに
引っ張り上げて貰いますから」


ケータイの向こうのセイに
そう告げながら

片手をあげて

ヘリに
おおきくサインを出す。


パラパラパラ。

ヘリのライトが
また点滅を繰り返した
と思ったら

ゆっくり、ゆっくりと
ヘリが再び上昇を始め


するすると
ロープが鈍い色の天に
吸い込まれていった。


「…ふたりとも大丈夫かな」


「せいぜい
プールのアトラクション
くらいの衝撃ですから

平気ですよ」


僕達も安全な場所へ
移動しましょう、って

カノンくんが
岩場を
先に進もうとするけれどッ。


「…でもッ」

泳げない子が
いきなりプールの
アトラクションなんて

心臓が止まっちゃうんじゃ
ないだろうか。


「地下にいるオンナノコは
泳げないって

ちゃんとヘリには
説明してくれたんだよね?」


「…彼女の傍に
誰がついているんだと
思っているんですか?」