カノンくんは
胸を張って
言い放ったけれど。
「…あの少女に
全く信用されてないセイ?」
…なんですがッ。
「……」
「……」
「…ここにいても
危険ですから」
ってッ!
カノンくんッ
どうして
私の不安をスルーして
先へと
進もうとするんですかッ。
「ちょっと待ってよ
カノンくんッ」
ヘリコプターの起こす風に
煽られるようにして
私とカノンくんは
安全な小高い場所を目指して
岩場を登る。
「…いくらセイでも
こういう事態のときくらい
自我を抑えて
上手く少女を
誘導してくれるよね」
信じているからね、セイ。
私はそう
自分に言い聞かせながら
後ろ髪を引かれる思いで
歩みを進めていた
のに!
「何だろ、あれ」
私の視界の端に入ってきた
向こう岸のおおきな車。
何かを担いだ
オトコのヒト達が
水面へ向かって走ってくる。
「…テレビの中継車
みたいですね」
「え」