「……」
カノンくんは
私の指示に従って
素直に
自分の鼻を片手で摘まんで
私の肩先で
シッカリと目を閉じる。
「進むよッ!」
カノンくんを
自分の右腕に掴まらせて
私達はさらに先へと急いだ。
ドバア、ババッ。
水の勢いが
何かの反動で
おおきくなる度に
「くあはッ、はッ」
カノンくんが苦しそうに
息を上げている。
…カノンくんには
悪いけど
私ひとりの方が
もっと楽に
階段を登れていたと思うッ。
確かに
地上に出た後
私ひとりだと
何をどうやればいいか
わからなくて
右往左往してしまうのは
目に見えてはいるけれど。
水を含んだコートが
重いッ。
カノンくんのカラダが
重いッ。
私の肩に掛った
使命と生命が
重すぎるッ。
地上と地下に
状況判断が出来る
賢いメンツが必要なのなら
セイがひとりで
地上に出て貰って
残りの3人が
下に居残ってた方が
効率的だったような
気がするッ。
「カノンくんッ
水しぶきの向こうに
緑がッ
緑が見えるよッ!」
「…出口のッ
付近の階段ッがッゴボッ
崩れているッか、…らッ
気をつけッてッくださッ
グボッ」
「…わかったッ」