「出口を出てッ
右ッすぐ右側ッに
岩場がッがッあるッ
上にッ上ッ登ってッ」
「言いたいコト
わかったからッ
カノンくんは
もうしゃべらなくて
いいよッ!」
出口付近の足元に
気をつけて
出口を出たら
すぐ右側の岩場に登って
避難する!
カノンくんの
言いたかったコトを
私はココロの中で
反復した。
…セイがカノンくんを
先に地上に上げたかったのは
この敷地内のコトに
精通しているから
だったのかな。
緩やかなカーブを描いていた
階段の向こう
振り返ってみても
もうセイと少女の姿は
確認出来ないけど。
「…待っててねッ、セイ」
出口に近づくにつれ
階段の段差が
わからなくなってきて
「あッ、わッ、とッ」
何度も足元を
救われそうになる。
「出口だよッ!
カノンくんッッ!!!」
「右ですッ!
岩ッ場ッ!
滑りやすいから
気をつけッてッ」
「これだねッ!」
私は出口付近の岩場に
手を掛けた。
ヌルルッ。
「くッ」
緑に苔生した岩場。
ツルツルとしていて
掴みドコロがないッ。
「ゲホッ、ゴホホッ」
私の奮闘に
カノンくんがまた
泥水を飲んで
咳き込み始めた。