息も絶え絶えに
カノンくんが
私の腰からぶら下がっていた
ロープを
地下道から手繰り寄せながら
私の背中を押す。
「あ、うん…」
…だけど。
遠回りなんかして
向こう岸まで
ちゃんと長さは
足りるんだろうか。
「カノンくんは
岩場沿いに進んで!
私、ここを真っ直ぐ
向こう岸まで
泳いでいくから!」
「地下よりも
遥かに水が濁っていて
泳いでいるウチに
方向が
わからなくなりますよ!」
「でもッ!」
「急ぎましょう!
こうしている間にも
どんどん水かさが
増してきます」
「あッ」
カノンくんに
腰のロープを掴まれて
私は強制的に
回り道をさせられた。
パラパラパラ。
音のする方を見上げれば
私達の頭上を旋回する
ヘリコプター。
「テレビ局の報道のヘリ
みたいですね」
「……」
本当にこれは
現実なんだろうか。
ヘリコプターが
私達の上空を
何度も何度も旋回していて
ヘリコプターの起こす
いやな風が
雨を激しく散らせている。
「…早く向こうに
行ってくれないかなッ」
どうせヘリが来てくれるなら
レスキュー隊の
ヘリならよかったのに!