冷ややかな眼差しを
私に向けてくるセイに
反論する私に

「何かあったときに

ひとりが支点になって

もうひとりが
救助しやすくする為の
装備ですから」

カノンくんが
セイの意図を説明する。


「ロープでみんなを
完全に繋げてしまうと

動ける範囲も限定されて
しまいますからね」


「助かりたかったら
さっさと前へ進め!」

…セイが
ますますエラそうに
私に命令したッ。


「トーコさん。

本当に泳ぐ破目に
ならないように
先を急ぎましょう」


カノンくんはロープを
クルリ、と
自分の手首に1周させて

少女の手首にも
同じように
ロープを撒きつける。


「あ…」

カノンくんの思わぬ行為に
少女のまるい頬が

真っ赤に色づいて
見えるのは

地下道の温かい色した
ライトのせいなのか。


「トーコさん!」

「あ、そうだよねッ。
急がなくちゃ、ねッ」


カノンくんのおおきな目に
急かされるようにして

私は先頭を歩きはじめた。