「左側にある出口から
水が入ってきていますから

流速がゆるやかな
通路の右側の方が
歩きやすいですよ」


…なんだか
カノンくんって

セイみたいだな。


そう感じていたのは

おそらく
セイも同じなハズで。


なのに

セイは
カノンくんの
自分そっくりな言動を
黙認したまま

私達の後ろを歩いている。


もしかして

怒りがマックスになりすぎて
口を訊くのも嫌だとか?


…なんかコワイ。


「…大丈夫?」

少女を気遣うフリをして

振り向きざまに
セイの様子を
窺おうとしてみたのに

少女のすぐ後ろにいる
カノンくんと

どうして
目が合ってしまうのかッ。


「大丈夫です」

俯いたまま私に答える
消え入りそうな少女の声に

カノンくんとの視線を切る
キッカケを貰えて
助かったッ。


だけどッ。

「……」
「……」
「……」
「……」

「…足とか辛くない?」

「大丈夫ですから…!」

「…そお?」

「……」
「……」
「……」
「……」

「あのッ」

「……」

「……」
「……」
「……」
「……」

…なんだろうッ
この嫌な沈黙はッ。