普通は
こーゆーとき

お互いを励まし合いながら
前へ進んでいくモノじゃ
ないんだろうかッ。


カノンくんが気になって
それどころじゃない少女。

気に食わないコトが
いっぱいあって
機嫌の悪いセイ。


そしてッ

さっきからずっと
私の背中に
熱い視線を浴びせ続けている
カノンくんッッ。


重いッ。

重すぎるぞッ。


「…くッ」

気がつくと水位も
太股のあたりにまで
上がってきて。

上半身を
左右に振らなければ

まともに前へは
進めなくなってきた。


ただの濁った水ではなく
粘土のように重い泥水。


ときどき
腰のロープが
軽く後ろに引っ張られて

少女の足取りが
危うくなってきているのが
わかる。


ローラースケートで
ここを走り抜けたときは
一瞬、だったから

なかなか思うように
前へ進めていない事実が

歯がゆく思えた。


「トーコ!

焦らなくていいから
確実に前へ進め!」

背中越しに
セイのおおきな声が
聴こえてきて。

…セイ。

ちゃんと
見ててくれてるんだ。