たったそれだけのコトが
なんだか凄く心強い。
私の腰には
セイに繋がる1本のロープ。
大丈夫!
頑張れる!
私は
シッカリと足を踏ん張って
一歩一歩大事に歩いた。
だけど。
先に進めば進む程
こっちに向かってくる
水流が強くなってきて
歩き始めたときには
ヒザの高さだった水位も
腰の高さまで
上がってきていて。
薄暗がりの先の方から
何やらゴウゴウ、と
嫌な音まで聴こえてくるッ。
「トーコさん!
そこ、すぐ前方左に
出口がありますから!」
カノンくんが持っていた
懐中電灯で
前方を照らし出しッ。
「でッ」
いきなりクリアに
目の前に現れたソレは
しぶきを上げて
階段から流れ込んでくる
水流でッ。
「……」
もっと手前で見えていたら
おそらく近づくのも
躊躇していたかと
思われたッ。
「…こんなトコ
本当に登れるんですか!?」
少女が怯えるのも
もっともで。
私やセイやカノンくんは
ともかく
運動とは縁のなさそうな
そのふくよかなカラダで
この急なこう配を
ひとりで上がっていけと
言うのは
あまりにも…。
「トーコ。
まず先に
カノンとふたり階段を上って
出口に出て
安全な立ち位置を確保したら
ロープをどこかに固定して
上からロープを
引っ張り上げてくれ」