「…そんなコトならッ」
この子の方が
適役なのではッ、と
私は少女から
持っていた懐中電灯を
奪うようにして
お役目を交代してッ。
「…まあ、いいけれど」
セイが私の顔を
ちらり見た。
「……」
戸惑いながらも
カノンくんの後頭部を
少女が
自分の胸元に抱き抱えると
ふわん。
やわらかな谷間に
カノンくんの首が
沈み込むッ。
「カノンの気道を
しっかり確保して!」
セイがカノンくんの
アゴと首の位置を
補正しようとして
手を伸ばすと
「はッ、はいッッ!」
慌てた少女が
カノンくんを抱えたまま
ばしゃん。
泥水の中
尻餅をついた!
「…あ」
「…カノンのアタマを
出来るだけ
揺らさないように」
「は、はいッ!」
「……」
…あんなにも
セイに対して
不信感いっぱいだった
少女が
胸の中に
愛するカノンくんを
抱き留めている感動からか
うるうるお目目で
セイの命令を
素直に聞き入れている。