セイが
カノンくんの口元に
自分の顔を近づけていくと…。
「え?」
近づけて?
近づけて、ってッッ
もしやッ
もしや、その体勢はッッ
それはマウスツーマウスの
人工呼吸ッ!!!?
アナタは少女の
そんな至近距離で
何をしようとしてるん
ですかああッッ!!!
「セイッ!
ちょっと待っ…!」
私がセイを止めるよりも
早く
少女がカノンくんの口を
片手で塞いでいてッ。
「…何?」
セイが怪訝そうに
少女の顔を見上げてたッ。
「だってッ」
「だって?」
「カノンくんッ
ちゃんと自分で息してるじゃ
ないですかッ…」
「だから?」
「だから…ッ」
「……」
「……」
創りモノのような
完璧なセイの顔を
間近でまともに
見てしまった少女は
まるい目を見開いたまま
固まるしかなくてッ。
「脳が損傷していないか
口腔内をチェック
したかったんだけど?」
「……」
セイに見つめられて
声も出せず
身動きも出来ず
視線も外せずにいる
少女の手を
セイは
カノンくんの口元から
弾き落とす。