本気ッ♂046
セイの右手が
しっかりと私の左手を
握っている。
急流の階段。
出来るだけ水の抵抗を
受けないよう
壁に胸をくっつけながら
慎重に
階段を登っていった。
「ここ、足元気をつけて」
「うん」
セイが私を
気遣ってくれている。
…カノンくんといっしょに
この階段を登ったときは
私がカノンくんを
励ましていたのに。
私より背が高い。
私より手がおおきい。
そんなコトが
頼もしいんじゃなくて
この手に伝わってくる
私を助けたいという
その強い意志が
めちゃくちゃ嬉しい。
この地上への階段が
もっともっと
続けばいい、なんて
思ってしまった私は
イケない子です。
「ほら、地上だぞ!」
「あ…」
出口の向こう
まるで天国への
入口のように
まぶしくて。
「姿が見えました!
ふたりです!
ふたりいます!!!」
真っ白な視界。
ヘリコプターの
プロペラ音。
地下道の出口の周りには
たくさんの
ヒト、ヒト、ヒト!
たくさんのライトと
フラッシュに
目が開けられない。