「ふたりとも
怪我はない!?」


オトコのヒトの
野太い声。

誰かに腕を引っ張られ

水の中から
救い出された。


私の左手の中には
セイの手が確かにあって。


「…セイ」

私がその手を強く握ると

セイがすかさず
握り返してきた。


…ふたりとも
ちゃんと助かったんだ。


「はは、あはは」

何故だか

ふたりして笑っていた。


おおきな毛布を
誰かにアタマから
被せられ

「心配しましたよ!!!」

カノンくんの声が
聴こえる。


目がシバシバして
上手く開けられないけれど


ああ。

私のヒザの上の
このやわらかい感触は

ふくふく少女の背中だ。


「…みんな無事で
よかった」


私は
私の胸にすがって
泣いている少女の
濡れた髪を撫でた。


セイは最初から
私だけを助けたいなんて

思っては
いなかったんだ。