「!!!」

何が起こったのか
よくわからなかったけど

今はセイの言う通りに
従うしかなくて。

「ナムサンッ!」

私は床に
カラダをヒレ伏せる!


ハシゴを握っている
無防備な手に
もし当たったら

私はハシゴを離さずに
いられるだろうか。


下にはカノンくんと
セイがいるけれど

体重のある少女が
そのまま彼らの上に
落下してしまったら…。


悪い想像ばかりが
アタマを独占してしまう。

「私はこの手を
絶対に離さない!

離さない!
離さない!
離さないッ!!!」


私は自分自身に
必死で暗示を掛けて

その瞬間を待つしかなくて。


「……」

静寂の中

「性相近し習い相通し!」

カノンくんの声とともに

弓の弦が
空気を弾く音がする!


その矢は
セイの思い描いた方向に
寸分違わず

私の頭上を越えて

パサッ。

私の背中の上に
何かが落ちた。


「…あ」

細いナイロン製のロープ。


「トーコ!
そのロープを手繰って
矢を掴んで

ハシゴの傍にある
壁の滑車にロープを通せ!」


セイがおおきな声で
私に指示を
出してくるけれどッ。