本気ッ♂027
「…すっごい
カビのニオイがする」
自然とそんなセリフが
口をついて出てしまっていた。
防空壕の名残りだと言う
その怪しげな
地下道への入り口は
ピラミッドの石室みたいに
見事に石が切り出されていて。
地下へと繋がる
幅の狭い石段を
私は少女の後をついて
降りていく。
つるッ!
「うおわッ!?」
「…足元が滑りやすいんで
気をつけてくださいね」
…その注意勧告は
私が転びそうになる前に
して欲しかったッ。
雨漏りがしているのか
地下水が
にじみ出てきているのか
ぴたん、ぴたん、と
水が落ちる音が
高い音で響いている。
天上からは
数メートルごとに電球が
ぶら下がっていて
私達の視界を
保護してくれているのだが。
「この電球。
濡れても大丈夫なのかな」
足元に
粉々になっていた
電球の破片を目にして
ふと不安になった。
「おじいちゃまが随分前に
屋外用のヤツに
摂り替えてましたから」
10年は大丈夫です、なんて
少女は自信満々に
胸を張るッ。
「…だったら」
何故ッ
この粉々になっている
電球は何なんでしょうッ。
足を止める私に気づいて
少女が振り返り
階段の下から
こちらを見上げてきた。