「…ああ。
それは
カノンくんがやったんですよ」
えッ。
「…カノンくんが?」
「ええ」
「割った?」
「はい」
「……」
…確かにカノンくんは
神経質なトコロがあって
ヒトの目がない場所で
うっぷん晴らしとか
いかにもしていそうな
タイプではありますがッ。
「カノンくんが
抱え込むようにして
大事に持っていた
弓袋の先端が
たまたま電球に当たって
割れちゃったんですよね」
…紛らわしい言い方をッ。
「あの日、午前中は
いいお天気だったのに」
天気予報も大外れして
「雨がパラパラ降ってきて」
大事な弓を
濡らしたくないから
駅までタクシーを、と
他の部員達と
おサイフの中のお金を
確認し合ってるのを見て
「おじいちゃんが
この地下道を
カノンくん達に教えたんです」
…カノンくんは中学生だから
お小遣いも
あんまり持たせて貰って
ないのかな。
セイなら
車を持ってる先輩OBとかを
平気で呼び出しそうだけど。