「カノンくんが
持っていた弓って
代々、弓道部に伝わっている
お守りみたいなモノで」
実際には
使うワケでもないのに
ゲン担ぎみたいに
大事な試合のときなんかには
必ず試合会場には
持ち込んでいたらしい。
そんな大事な弓を
初めてレギュラーに選ばれた
部員のひとりが
「ただの練習試合なのに
先輩達にに内緒で」
勝手に持ち出したのが
コトの始まり。
「カノンくんって
弓を引いているときは
あんなに凛としているのに」
案外
間が抜けている
トコロがあって。
弓の先が電球に触れたとき
弓は気になるし
電球は気になるし
周りが薄暗くなるし、で
「すんごい焦っている姿が
微笑ましくて…」
ツンケンしていた
少女の口調がやわらかくなる。
「……」
…初めて会ったときの
彼女と同じ笑顔だ。
「ふふふ」
「何ですかッ!」
「…いえ、何でも」
やっぱり
可愛いトコあるじゃないの〜。
「先を急ぎますよ!」
恥じらって
突っ張ってる姿も
可愛いぞッ。
…だけど。
少女の白いスカートの
お尻から下が泥だらけで。
本気で
そんな格好のまま
カノンくんの前に
出る気でいるのかな。