この子の恋の仕返しをしようと

あんな落書き騒ぎまで
起こしてくれるような
友達なのに


駅でこの子は
ずっとひとりぼっちだった。


誰かに電話するでもなく
メールするでもなく。


「もうみんなウソばっかり」

誰も信じられない、って
泣いていて。


…ケンカでも
しちゃったのかな。


この子のこんな性格だと

自分が悪いと思っていても

謝れずにいたり
してそうだよね。


「……」

ヌルヌルになった
勝負パンツに
そっと指で空気を入れながら

私は
ゆっくりと立ち上がった。


「電球の破片の上に転ばなくて
よかったですね」

少女が階段の
最終地点らしい場所から
こっちを見上げていて。


「…ずいぶん
地下に潜っちゃったけど」

大丈夫なのかな。


「近道って言ってたよね?」

雨を避ける為だけに選んだ
地下道ではない、と
信じたいッ。


「トーコさんって
ローラースケートくらい
出来ますよね?」


「え?」

階段の横に転がしてあった
ローラースケートを

少女が持っていたカサで
突いてみせる。


「貸してくれるの!?」


急いでいた私を

少女は本気で手助けしようと
してくれてたんだ。


「この地下道を
知っている近所の子が

置きっ放しのままに
しているヤツだから」