「何って、知らないの?」
左肩肌を脱ぐのは
「心臓を出して
命を掛けて
弓を引くって意味で」
いかにも弓道家らしい、って
ケータイの修理って
そういう問題
なんでしょうかッ。
しかもッ。
そんな弓道家の目の前を
泥や雨水の染みた衣服のまま
堂々と弓道場の砂場を
突っ切っていますけれどッ。
これって
アリ、なんですかッ!?
振り返ると
私達ふたりが歩いた跡が
クッキリと残されていて。
…ああ〜。
なんか神聖な場所を
穢してしまっている
無力な自分が
とっても哀しいッ。
「ほら、あれが
カノンくんが
気に入ってくれた…」
…少女の弾むような声に
顔を上げると
弓道場で一番目立つ場所に
おおきく掲げてあった
それは
畳2畳分はありそうな
大作で。
カノンくんでなくても
思わずその迫力に
息を止めてしまう。
「……」
確かに
部室の落書きと
同じ人物が書いたモノとは
到底、思えなかった。