「だったらッ
アナタのケータイを
貸してくれれば
いいじゃないッ」
「…知らない番号から
掛ってきても
黙って
出てくれるようなヒト
なんですか?」
うッ。
「あんなに怒鳴り散らして
冷静さを欠いていた相手に
電話しても
火に油状態になるだけじゃ
ないんですか?」
うッ、うッ、ううううう。
その通りだと
思ってしまっている自分が
悔しいですッ。
「さっさと行きましょう」
…何だか彼女の術中に
ハメられているだけのような
気がしますけどッ。
「ほら、あの緑の向こうの
弓道場の中に
防空壕を利用してつくった
地下道が残ってるんです」
少女がアゴで指示した
方向には
遥か先の方まで
背の高い針葉樹が並んでいて
竹で出来た柵の合間から
微かに緑の庭が見える。
「…これ、本当に
個人の私有地なの?」
「弓道場だって
言いませんでしたか?」
…弓道場ッ。
口元に
微かに笑みを湛えた少女に
嫌な予感ッ。