少女はカサを畳むと
器用に隙間の中にカラダを入れ


「ほらッ!
ちゃんと通れるでしょッ」


「…あ、うん。そ、だね」

…脂肪という存在が
移動して形を変える瞬間を

今、まさに目の当たりにして
しまったぞッ。


…ちょっとした特技だなッ。



「…何をしてるんです?」

ついてくる気もなかったクセに
自分を見世物にするだけ
しておいて、って

言わんばかりの

少女の目がコワイッ。


ここで引き戻ったりしたら
私は彼女に恥をかかせたとか
誤解されて

もっと凄い嫌がらせに
遭ってしまうんだろうかッ。


「……」

弓道場って言ってたから

中に入ったら
電話のひとつくらいあるよね。


それに

あのセイが
電話であれだけ
大声を出してた、ってコトは

私が想像していたみたいな
緊迫した場面なんかじゃ
ないのかもしれないよね…。


私は
自分を納得させる理由を
ひと通り並び立てると

「おしッ」

覚悟を決めて
竹垣に手を伸ばした。


「よッ!」