勢いをつけて
私が軽々と
竹垣の上を乗り越えるとッ。
「…まるでドロボウね」
なんてッ。
体育館で私の演技に
拍手していたかわいい少女と
同じ口から
出てきたコトバだとは
思いたくもありませんッ。
「……」
中に入ると
目の前に広がるのは
意外にも苔だらけの
湿気た庭で。
ヌルッ。
足を踏み入れたトコロが
少し沈んだッ。
「…ここ。本当に
入って大丈夫なの?」
初めて訪れる
知らないヒトの私有地への
玄関ではない
イレギュラーな場所からの
侵入に
ただでさえ
ドキドキしてるのにッ。
苔の大群が
帰れ、と私に警告している
ようにすら思えてくる。
なのにッ。
「…この弓道場に
私が書道展で賞を貰った作品が
飾ってあるんですけど」
なんてッ!
…もしかして
近道、なんて言っておいて
私にそんなモノを
自慢する為に連れてきたとか
そ〜ゆ〜オチでは
ないですよねッ!?