奥の座席のオトコが
私のコートを
首から引っこ抜こうとする手を
私が抱え込むようにして
噛みつくと
「お前ッ
いい加減にしないと殺すぞ
オラッ!」
髪を鷲掴みされ脅されるッ!
「や…」
私のカラダの下で
少女がまた声にならない声を
出していてッ。
「…くッ」
…とにかく
この子だけでも
逃がさないと。
相手はオトコがふたり。
後部座席という
身動きのつかないトコロに
いるからこそ
今は何とか抗うコトも
出来ているけれど。
車を発進させられて
どこかに連れ込まれたら
おしまいだッ。
とにかく
この子を転がして
車外に逃がせれば
きっと異常を察してくれる
親切なドライバーが
いるハズだ。
「ぐッ」
私は少女の
やわらかいカラダを
車から足で
押し出そうとしてッ!!!
「やあああああ!
パニックして私まで蹴るのは
やめてくださいッ」
なんてッ
少女が悲鳴を上げ出してッ
少女が持っていたカサを
振り回す!
「やめろッ!
こらッ!!!」
狭い後部座席で
中途半端に開いていた
折り畳みのカサが
ぷるッ、くるッ、ぶるるッ!
不規則な動きをしてッ!
パニックしてるのは
いったい
どっちなんですかッ!!!