少女が
私のコートの袖を掴んで
つかつかと歩き始める。


「…近道、って」

「私、土地っ子ですから」

「……」

力強い少女のセリフに
私は、ふと不安を覚えた。


…さっきまで
あんなに震えてたのに。

立ち直りが
早すぎやしませんか。


「…さっきのヒト達のコト
怖くないの?」

「……」


まさかとは思うけど

「さっきのヒト達
知り合いとか…?」

ヤラセ、とかじゃ
ないですよねッ。


「…あんな知り合いが
いるワケないじゃないですか」

「…そうだよね」

顔見知りには
見えなかったし。


あれが演技だとしたら
この子は
名女優になれると思うッ。


「…この制服目立つから
普段はこんな手洗いマネ
されないんですけれど」


…確かに制服を着ていると

先入観を持って
見られてしまうコトが
あるけれど。

お金持ちのお嬢さま学校。

ちょっと連れ歩いて脅せば
素直にお金を出すと
思われたのかな。


…セイみたいに
それを上手く利用できる
アタマのよさと
逞しさがあれば

制服の着心地も
さぞかしいいだろうに。


「制服が目立たない
夜間や突然の雨に備えて
派手なカサを常に
持ち歩きましょう、って

先生の言いつけを
ちゃんと守っていたのに」