何を言っても
受け入れられそうにない
この空気ッ。
「…私、ホントに
急いでるんだ!」
今は一秒でも早く
セイの元に駆けつけたい。
なのに!
「カノンくんと
同じ屋根の下に住んでるから
私なんて余裕で
無視できるんですよね!?」
少女がしつこく
私の後をついてくるッ。
…困ったな。
私はともかく
カノンくんとセイは
血が繋がった
正真正銘のイトコなんだけど。
「……」
ひと言では語り尽くせない
カノンくんと我が家の
複雑な関係。
「親戚なのはウソじゃないし
カノンくんが
今、ウチにいるのは
寮が浸水して
住めなくなったからだからッ」
「どうだか!」
と、疑われましても…。
私は急ぐ足を
止めるワケにはいかなかった。
だけど。
「他の寮生はみんな
高等部の先輩の部屋を
間借りしたりしているのにッ
カノンくんだけ
親戚の家なんて
あまりに不自然じゃ
ないですかッ!?」
「え」
少女の放ったコトバに
私は
思わず足を止めそうになるッ。
「…他の寮生はみんな
浸水後も寮にいるの…?」
「……」
どこまで
しらばっくれてるんだ、って
言わんばかりの
少女の厳しい疑いの目ッ。
「何度も同じコトを
言わなきゃ
理解できないんですかッ」
「いえッ、あは、はッ」
…ああッ。
やっぱり苦手だ、この子ッ。