「何かよっぽど
魅力的なコトでもない限り

快適な寮を離れて

あんな馬小屋みたいな
狭っ苦しい中古マンションに
住みたいだなんて

おかしいと思うのが
普通でしょう!?」


…そのセリフッ。

お願いですから

間違ってもパパの前で
口にしないでくださいねッ。


「たぶんウチのママあたりが
お節介をやいて

カノンくんをウチに
呼び寄せたんじゃないかな」

うん。
きっとそうだよ!

深い意味なんて
ないに決まってる!


「アナタがそう仕向けたんじゃ
ないんですか?」


…どうしてそこまで
私とカノンくんのコトを
勘ぐっているのか
知らないけれどッ。

「私には彼氏がいるし…」


「彼氏がいるのに

朝から駅で堂々と
カノンくんと手を繋いだり
しているんですか?」

ってッ!!!

み、見てたんですかッ!!!


「あ、あれはッ」

あれはカノンくんから…。

「あれはッですねッ」


状況説明と釈明のコトバは
出てこないのに

額からは大量の汗が
噴き出してきたッ。


今だけは雨露で
額が濡れているコトに
感謝しようッッ。


「私が渡した手紙を
嫌がらせだ、と見破るのは

こういう種類の嫌がらせが
発想できる

性格の悪いヒトだけ
だから、って

友達も言ってたけど」


本当にその通りだったわ

なんてッ。


確かにアナタの
おっしゃる通りですッ。


手紙の裏読みに気づいたのは
性格の悪いふたりでしたしッ。


「性格が悪いから

状況が悪くなったら
そうやって平気で逃げ出したり
出来るんですよね!?」