「書道部なんだ」
そのワリに
部室の窓にに書いた
ペンキの文字は
下手っぴだよね、なんて
口が裂けても
言ってはいけないッ。
足元を流れている雨水を
私より先に行くな、と
靴でせき止め
八つ当たりなんかして
私は気を紛らわした。
「…私のコト
カノンくんから何も
聞いてないんですか?」
聞いてないです、なんて
正直に答えてしまっても
いいですかッ。
赤信号やら雨やら
少女の存在やら
私はいろんなコトに
苛立っていて。
「……」
「……」
「やっぱりカサ
買った方が
よかったんじゃないですか?」
「……」
「信号に引っ掛かるのが嫌なら
地下道ですけど
別のルートもありますけど」
…そんなルートが
本当にあるのなら
どうして
先に教えてくれないのかッ。
「…別にいいよ」
迷子になったりしたら
ロスタイムだから、って
答えてみせたけど。
本当は
この少女に
主導権を取られるのも
恩を売られるのも
嫌だった。
…もうマジに
この子を振り切ってしまおう。
青信号と同時に
スタートダッシュを
掛けようとしたとき
「キミ、どこまでいくの?」
1台の車が
私達の前で止まった。