本気ッ♂036


「大丈夫だよ!

私、こう見えても
水泳、得意なんだッ!」


「うッ、う、うッ」


「流れの速い川とかだって
全然平気なんだからッ!」


「う、うう、うッ、えッ」


「私にしっかり
しがみついてれば
いいからねッ」


「うッぐ、うう、うわ、ん」


…泣きやもうとはしない
少女。


「……」

哀しいかな。

少女に話し掛ければ
掛ける程

今度はこっちが
不安になってくる。


いつもなら

私の根拠のない勝算に
セイのツッコミが
容赦なく入ってくるのに。


…確かに
黙っててくれるかな、って
言ったのは私だけどッ。


「うッ、うぐ、えッ、え」


私がしゃべるのを止めると
少女の鳴き声ばかりが

地下道に反響していた。


…地下道で
お友達に遇う前は

「性格が悪いから

状況が悪くなったら
そうやって
平気で逃げ出したり
出来るんですよね!?」とか

元気に私に突っ掛かって
きていたじゃないですかッ。


溺死するより

車でオトコ達に
拉致されてた方が
よかったですッ、とか

何でもいいから
言い返してきて欲しいと
思う自分が

切ないですッ。


「セイ〜…」