…カノンくんの口ぶりから

セイは右手指を
怪我している
らしい、ってのは

想像できたけれど。


懐中電灯を握っているから

全くその状態が
ここからではわからない。


「酷い怪我なの!?

血とか、ちゃんと
止まってるのッ!?」


セイを質問攻めにする私に

「!」

うっとおしいと
言わんばかりに

セイが
持っていた懐中電灯を
こっちに向けてくるッ。


「…こんな余計なモノの為に
時間を取られてたなんて

本末転倒とはこのコトだ!」


セイの声のトーンが
めちゃ、コワイッ。


なのにッ!!!


「怪我したコトを
僕なんかに
悟られてるようじゃ

先輩もまだまだですね」


なんてッ!!!!


ただでさえ

自分のミスを
指摘されるのが
嫌いなセイなのに…!


ゴンッ!


セイが
持っていた懐中電灯で

壁を殴りッ!


「きゃッ」


またハシゴが
おおきく揺れたッ。


「……」


…お願いですから

こんな状況下で
そんなことくらいで

争うのは止めてくださいッ。


「カノンくんッ!
あのねッ!

この子がねッ
アナタに
話があるんだってッ」


「えッ、私ッ!?」