本気ッ♂034


「アナタが
こんなときにさえ
口にしてしまうくらい

肉まんが好きなのは
わかりましたけどッ

やっぱり
こんなときにまで
口に出すのは

ちょっと非常識かと
思います!!!」


ネジが外れたハシゴの上で

ふくふくホッペの少女が
セイに向かって
訴えているッ。


「…俺は肉まんなんぞ
眼中にもないが」

冷たい空気の中

セイのつぶやきさえ
反響気味に
ハッキリと聴こえてきて。


「恥ずかしがらなくても
いいですよ!

アナタだけでなく

肉まんは
みんなが大好きですからね!」


私の支えているハシゴが

少女の発言とともに
揺れていたッ。


まさか自分のコトを

”肉まん”などと
陰で呼ばれているとは

ツユ知らずッ。


少女は本気で
セイが
”肉まん”の話をしていると
思っているッ。


「みんなが大好きだと?

…案外、図々しいヤツだな」


セイの低い声に
私は嫌な予感がしてッ。


「あのッ!
肉まんの話はもうッ

今はカンケイない話だしッ」


話を必死で
打ち切ろうとしたのにッ。


「コイツは思いっきり
当事者だと思うけどな」


なんてッ。


「どういう意味ですか!?」

少女がセイの意味深発言に
食らいついたッ。