こんなときにまで
リアルな生理現象までもが
私をバカにしてッ。
「……」
セイが電話に
気を取られているウチに、と
私はそっと
コートの袖口で
鼻水を拭おうとした。
のにッ!!!!
「ティッシュなら
まだ残ってますからッッ!」
ってッ。
「……」
この失態を
またしても少女に
目撃されてしまっているッ。
私と少女に向けられている
セイの持っている
懐中電灯の光のせいで
セイの表情がよく見えない。
セイの電話する声が
まだ続いていて。
「…電話に夢中で
今の会話には
気づかなかったのかなッ」
私はホッと
胸を撫で下ろした。
…のにッ!!!!!
「全部使い切っても
構いませんからッ!」
少女は
カサを持っている手とは
反対の手で
サクラパンダの
ティッシュを袋ごと
私に向かって
投げ上げてきたッッ!!!!
「ちょっと、待ってよッ!?」
この少女には
私が必死に両手で
ハシゴを支えているという
認識が
本当にあるのでしょうかッ。
いくら
うっかり自慢な私でも
手を離すワケは
ありませんしッ
いくら
運動神経が自慢な私でも
口でキャッチする
勇気もありませんッッ!
少女の投げ上げた
ティッシュは
逆U字を描いて
ばちゃ〜ん、と下に…。
って。
「ばちゃん???」