どうやら
その手に持っている
懐中電灯を手にするまでに
ひと悶着も
ふた悶着もあったらしく。
「洪水になりそうだから
今、懐中電灯を
貸し出すすワケには
いかないなんてさッ」
融通が利かないの、って
言いながらッ
さっきからアナタが
オモチャのように扱っている
でっかい懐中電灯に
この距離でもわかるくらい
おおきく描かれているのは
この電鉄のマークのような
気がするのですがッ。
どうやって
それを手に入れたのかは
あえて
触れないコトにしますッ。
触らぬ神に
祟りなしッ。
自分の思い通りに
コトが運ばずにいるときの
セイには
逆らわないのが一番だ。
だけど。
セイのイライラの原因が
私の行動だけに
あったのではない、と
わかって
安堵する自分がいて。
鉄棒を握っていた
その手からも力が抜ける。
グラリ。
おおきくハシゴが傾いて!
「きゃ」
「とおッ!!」
すかさず鉄棒を握り直し
ハシゴを引きよせたのにッ。
カラランラ。
金属製のモノが
落下する音がして。
「足がッ!
足が抜けたッ!!!!」
「足ッ!?」
少女の悲痛な訴えに
私は下を覗き込んだ!