本気ッ♂032


夜中になると
私の布団の中に
潜り込んできていたセイが

ひとり寝が
出来るようになったのは
いつからだったか。


いつも
当たり前みたいに
そこに存在していたモノが
なくなって

何だか
腕の置き場がみつからない。


布団を丸めて

人間抱きマクラの
代用としてはみるモノの。


やっぱり
セイのあの独特の
抱き心地とは程遠かった。


ちいさい頃のセイは

どこか
ミルクのような匂いがして

吸いついてくるような
きめ細やかな肌が

抱きしめると
気持ちよかったのを
覚えている。


今のセイの肌も
とっても綺麗だけれど

もうあのときのような
ミルクの匂いは
しなくなっていて。


一緒に眠っていても

抱きマクラにされているのは

セイではなく
私の方だ。


セイの長い腕が
私の背中に回されて

ときどき
息が出来なくなるくらい

むぎゅううううむッ、って
抱きしめられては

「はふッ」

その苦しさに
もがくように目が覚めた。


やっとの思いで息が出来て

真っ赤に頬を紅潮させている
私のちいさな鼻を

その長い指で摘まんでは

セイがククク、と
笑っていて。

「可愛いな」

スリスリ、スリスリ。

頬ずりされるッ。