…可愛い、と
ココロの底から
本気で言われて
嬉しいハズのそのひと言も
この過剰なまでの頬ずりが
近所の子犬に対するそれと
似通っていて
どこか私を
複雑な心境に駆り立てた。
「……」
かく言う私も
幼いセイのコトを
抱きマクラ代わりに
していたから
ヒトのコトは
言えないけれどッ。
「セイの抱きマクラ。
恋しいな〜」
ふに〜いい、って。
抱きしめながら眠ると
朝なんてあっという間だ。
可愛い
可愛い
可愛いセイ。
やさしい温もり。
あたたかな記憶。
何故そんなモノばかりが
アタマの中を
支配しているのかは
わからないけど。
「…抱きマクラの
代わりになるモノ
何かないかなあ」
半分、夢の中。
手を伸ばしてみるけれど
その手は空を切るばかりで
何も掴めずにいる。
指が何だか
自分のモノではない
みたいで。
「ぎゃあああああああ」
「!?」
その叫び声に
そんな私の全ての機能が
一瞬、停止した。