「そんなトコロで
何やってんですかッ!?」
「……」
「トーコさん
なんでしょッ!?」
「……」
お友達と一緒に
私の元を去っていったハズの
ふくふくホッペの少女の
甲高い声が
冷たい空気の中
響き渡る。
「水滴が落ちてきたから
見上げてみたら
暗闇の中
腕のシルエットが
覗き見えたりするモン
だからッ
幽霊かと思いましたッ」
「……」
少女の声に反応するように
私は目を開けると
自分の伸ばしていた手が
奈落の底に向かっていた。
「どうしたんですか?
怪我でもして
動けないんですか?」
「…あ、ううん」
声は出たけど
…カラダが重い。
濡れたコートが
フェルトのように
なっていて。
動けないんじゃなくて
カラダがダルイんだ。
「通りがかったのが
私だったから
よかったですけど
他のヒトなら
失神してましたよ!」
少女の溜息混じりの声と
一緒に
カン、カン、カン、って
金属音が響いてきて…。
って。
「ええッ!?」
私は
まさかの展開に
勢いよく
身を起こしていたッ。
「そのハシゴッ
危険だから
登っちゃダメッ!!」