本気ッ♂031


カン。カン。カン。


私がハシゴを一段
足を掛ける度に

金属と金属がぶつかる
甲高い音がする。


下から見ていたよりも
遥かに高い天井。


「私、そんなに地下に
潜ってたのかな?」

天井に近づく度に
カビ臭さが
一層、酷くなってきて

思わず
鼻を押さえたくなった。


だけど。


「あッ」


足を掛けた
ハシゴの鉄の棒が

音もなく

静かに沈んで。


「…大丈夫、だよね?」

次の足を踏み出すのが
怖くなる。


ハシゴを掴んでいる手に
力を入れて

そっと下に向かって
引っ張ってみると

人差指が触れていた部分に
ちいさな穴が空いてッ。


「…おいおいおいッ」

冗談じゃないぞッ。


そのハシゴの
恐ろしいくらいの腐食ぶりに
気づいて

「ごっくんッ」

思わず私は息を飲んだッ。


「…知らずに
ここまで登ってきてしまった
とはいえッ」


下を見ると

剥き出しになった
床のコンクリートが

灯りに照らされ
浮かび上がって見える。


「…結構、高いなッ」


横の壁までの距離は
どれくらいあるのだろうか。