実に自分の目の前!
真っ正面に
”ソレ”はあって。
一瞬、私を期待させた。
けど。
いくら滑車があっても
「ロープがないと
役には立たないよね…」
滑車を使わずに
ロッククライミングみたいに
自分の腕の力だけで
石を掴んで
壁伝いに
降りるコトが出来れば
いいんだけれど。
ハシゴの下の方は
せいぜい2〜3メートル
くらいかな、と
目測していた
壁同士の距離も
天井に近づくに従って
広くなっている。
「ここからだと
向こうの壁まで
飛び込み前転が
出来そうなくらいの
距離がありそうだ」
さすがの私でも
跳び移れるとは思えない。
運よく
あの滑車に
跳びつけたとしても
だだでさえ
電気のない暗闇の世界だ。
手探りのようなこの状況で
足場を見つけながら
降りていけるのなんて
無謀なマネが
躊躇なく出来る人間は
アメリカン・ヒーロー
ぐらいだろう。
「……」
取りあえず
降りるコトは出来なくても
「身の安全は
こうして
確保出来ているんだしッ」
セイが私を
見つけ出してくれると信じて
「ここで待ってるのが
賢いよね」