今更、急いだって
急がなくったって
変わらないだろうけれど。

やっぱり
最後まで頑張りと誠意は
見せるべきで。


足に無理やり
フィットさせた
ローラースケートで

私は速度を緩めず
走り続ける。


セイが今置かれている状況が
どの程度大変なのか

おおいに
疑問符がつくトコロでは
あったけれど。


それでも

「セイがこんな私を
必要としてくれているんだ」

それだけで充分
先を急ぐパワーになった。


ふくふくホッペの少女に
差し出した
お節介な私の手は

「見事なまでに
無視されちゃったけどッ」


差し出したコトを
後悔しそうになっていた
自分を

”セイ”と言う存在で
奮い立たせる。


「ローラースケートって
多分、小1以来だと思うけど

意外とカラダは
覚えているモンだな〜」


パパが友達から
譲り受けてきた

古い、古い、子ども用の
ローラースケート。


…あのときのと

何だか履き心地が
ちょっと似ていた。


「ひとつの
ローラースケートを

セイとふたり

交代に使っていたんだよね」


セイにはぴったり
サイズが合っていたのに

私には微妙にちいさくて。


ローラースケートが
靴から外れては

危ない転び方をする度に

ちいさなセイが
おおきな目をうるませながら


「トーコちゃん!
トーコちゃんッッ!」

私の傍に
おおげさに掛け寄ってくる。