「礼には及ばんが
どうしても感謝を形に
表したいのなら…」
「誰がッ!!!」
私の蹴りを
セイのバカがまたしても
軽々とかわしてくれてッ。
「悪いけど
お前のその濡れた靴で
制服を汚したくはないんでね」
あはははは、と
大笑いしながら
ポケットに
両手を入れたまま
私をからかってくるッ。
「むむむむむうううう」
ずいぶん余裕を
かましてくれるでは
ないかッ。
後ろに目など
ついてるハズもないのに
そうやって
こちらに
カラダの正面を向けながら
足取りも軽やかに
後ろに下がっていけるのは
自分がヒトを避けなくても
ヒトが自分に
道を開けてくれる、と
確信しているからなのか。
セイの傍に居過ぎて
鈍感になっている私でさえ
こうして距離を置くと
そのオーラの強さを
改めて実感する。
キラキラ
キラキラ。
極彩色の見えないオーラ。
逆光になっても
シルエットだけで
充分にその美しさが
伝わってきた。
だから
「その制服ッ!
防水、防汚加工
されてるんだ、って
いっつも
自慢してたクセにッ」
そんなセイに
気押されないように
私は大声で
その場の空気を破るッ。