「自慢なんかした覚えは
ないけどな!」

セイの笑い声が
逆光の向こうから
聴こえてきて。


天上の声。

天使か悪魔か判断がつかない
その妖しいシルエットに

心臓がいっそう高鳴った。


どんッ!


そんな私の背中に

こんなトコロで
立ち止っているんじゃ
ないよ、って
言わんばかりに

先を急ぐヒトの肩先が
乱暴にぶつかっていく。


「あ、スミマセンッッ」

よろめきながら
背後に視線を泳がせると

黙ったまま立ち止っていた
カノンくんと目が合った。


「あはッ?」

笑ゴマする私から
スッと視線を外して。


…冷たい目。

カノンくんが
スタスタと歩き出す。


「……」

機嫌の悪さは

今に始まったコトじゃ
なかったけれどッ。


そもそも
機嫌を損ねた原因は
セイの言動であって

私はむしろ
そのフォローに
回ってたんだから

少しくらい
お愛想してくれても
いいと思うッ。


だけど
年下のオトコノコ相手に

哀しいかなッ。

口に出せない
小心者の自分がいてッ。


…セイといい
カノンくんといいッ。


醸し出してくる
”俺に構うな”オーラは
何とかならない
モノでしょうかッ。


ふくふくホッペのオンナノコと
カノンくんの間に

何があったのかは
わからないけれど。


何かが
あったんだろうってコトは

カノンくんのそのダンマリが
物語っていた。