ラブレターの真意はともかく
私の部室に
派手な落書きをする
あのエキセントリックさ。
ふくふくホッペのオンナノコが
カノンくんに対して
どんな感情のぶつけ方を
してきたのか、なんて
想像するのもコワイけどッ。
「寮の水道管の騒動だって
案外、あの肉まんオンナの
仕業だったりして」
…セイの憶測が
アタマの中に甦るッ。
「男子校の寮に
どうやったら女子中学生が
忍び込めると言うんだかッ」
ぶつぶつと
独り言を呟きながら
カノンくんの後を追う
自分の足取りが
どんどん重くなっていくのが
わかった。
「だらだら歩いてたら
乗り替えの電車に
乗り損ねるぞッ!」
…気の短い天上のヒトの声が
ホームに響くッ。
「わかってるよッ」
私は
わざと乱暴に返事をして
階段を
イッキに駆け上がった。
「カノンくん?」
階段を登り終えたトコロで
カノンくんが立ち止っている。
「ほら!、カノンくん!
電車が
ホームに入ってきたよ」
思い切って
声を掛けた私に
「あ、…ええ」
カノンくんが
我に返ったようにして
初めて返事をした。
「?」
カノンくんは
いったい何に
気を取られていたのか。
カノンくんが
視線を向けていた方向を
覗き込もうとして
「トーコさん!
乗り損ねますよ」
私は強引にカノンくんに
腕を掴まれ
そのまま
引きずられるようにして
後ろ向きのまま
電車に向かって走らされる!
「ちょ、ちょっと
カノンくんッ!?」